2017年4月6日木曜日

「教室の窓から世界が見える」←出停記念日「わが街の小劇場」です!

1度、2度、3度目の『出停記念日』、良かったですね。「21世紀のはじまりと20世紀の終わりをつなぐ二つの物語り
」です!小さな空間ゆえに、じわりと伝わるもの、曖昧だった台詞、息遣いが迫ってきた小劇場でしたね。これは毎年上演すべきレパートリーだね!例えばイオネスコの『授業』が毎日パリの小劇場で上演されるように、実は毎月上演されても遜色ない、まさに今の演劇ですね。

高校教師だった作者は高校演劇に拘泥されている雰囲気も見えるけれど、そして学校現場の教室からあふれ出る物語りではあるけれど、教室は社会を照らしている場でもあり、一人一人が背負っているものが見え隠れしている。現実を切り取って見せる作品は、断片が全体を照らす魅力を持っている。教室が世界を照らしている。それが詩劇であり、実存を、人類史をまた照射してくるということに驚く。いい作品は、色あせない、普遍的な何かを持っているのだということがこの二つの物語りが伝えている。高校生がいる限り、世界があるかぎり、この作品は実存を、状況を照らしていくのだろうか?

「教室の窓から世界が見える」このキャッチコピーはいいですね。「21世紀のはじまりと20世紀の終わりをつなぐ二つの物語り」このキャッチコピーもいいですね。21世紀の始まり、戦争の世紀がピリオドを打ち、世界は平和に向かうかと思ったら、ますます、混沌とした世界へ突入である。21世紀の始まりの9・11はテロの世紀の始まりであり、国家やメインメディアが世界の民衆を騙す世紀の始まりを大胆に告げたのだった。もし、那覇の空港で、何かが起こったら、真っ赤な夕日が現実になるかもしれない。航空自衛隊基地と那覇飛行場は共有なのだ。生と死の拮抗は、実は内包された死を擁きながら生きざるを得ない存在であるわたしたちが、社会や世界との微妙なバランスの上に生きているのだということを暗示している。

教室の女子学生たちの語りが映すもの全体が詩のように見えてきた。友情が一つのテーマなのかもしれない。生と死がコインの両面のようにそこにあり続ける。周子(嘉数雅生)、さやか(儀間果南)、千愛(上原万衣乃)、涼子(金城萌那)、奈苗(喜納香音)、5人の女子高生は普通の素の高校生に見えたが、さやかの細い身体から響いてきた太い歌唱に驚いた。もっと聴いてみたかった。彼女が建物の上に船が乗っているように見えるんだよね、などと話していた。母子家庭の少女。海は島と島をつなぐんだの台詞は逆の発想で印象に残る。見方を変えると世界はまた変わったものになり、変わった姿を見せるのだということ、を示している。儀間果南さんは映画『人形に会える日』の主人公の女子高生だったのですね。後で気がつきました。髪が短かったので、別人かと思ったのですが、よく見ると当人でした。声が太いですね。クラスのみんなから疎外されているようなシャイな女子高生を細身の身体で演じていましたね。映画とはまた異なる雰囲気で、それも良かったですね。

二部は生徒指導室の山田先生(福永武史)、担任の宮城先生(神田 青)、問題行動のある新垣(あずみ)正人(宮城邦迅)三人のやり取りが観客席をうならせ、沈黙に誘い、笑わせた。明治からこれまで教室が四間X五間の大きさであり、それが兵舎のサイズと同じだったこと、また人という字の旧字体を書いた宮城先生の説明で、それが兵隊に見え、奴隷に見え、そして当の宮城先生が生贄ということばを出すのである。ハットする瞬間が訪れる。しかし未来を向いているんだ。オレのいくところが未来なんだ。最後に正人は「先生、おれ兵隊にならんからなー」と言う。いいね。「ティルル」のやや広いステージと異なり、コンパクトな空間ゆえに収斂された演技で、ことばの密度がくっきりと浮かび上がったのは良かった。小劇場の持ち味だね。

けっこう、この作品についてはこのブログでコミットしているので、もう書く必要がないかと思っていたけれど、あまり批評がネットで書かれていないようなので、また備忘録として書いておきますね。毎年上演ですね!暴力や体罰に関して、もっと突き詰めてみたい。山田先生や宮城先生と正人のやり取りは高校教師と生徒の関係にある種、信頼関係を与えてくれますね。生徒を愛する教師の存在感が感じられますね。また心を開いていく正人の存在やことばは、年齢、性別、教師、生徒を越えた人と人の交流の可能性を見せます。

背後に流れる実存、存在そのもの、人であること、人類史が走馬灯のように一瞬光を放ってくるようでしたね。

福永さんへ、これはもう毎年、やらないといけないね。毎年上演する舞台のレパートリーなんだこれはー。多くの若者に、大人に、見てほしい現代沖縄演劇の秀作だね!「わが街の小さな劇場」からいい作品のレパートリーが増えていくのは嬉しいことです。

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