沖縄県民はまた裏切られることになるのか by 植草一秀(政治経済学者)
第1663号
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沖縄県の翁長雄志知事は2015年10月になって、ようやく
「埋立承認取消」
に動いた。
知事に就任したのは2014年12月。
「埋立承認取消」に駒を進めるのに、10ヵ月の時間を費やした。
何よりも重要なことは、これが、
「事前協議書」
を沖縄県が国から受理した後であったことだ。
沖縄県が「事前協議書」を受理したことで、
する条件が整ったのである。
逆に言えば、
埋立承認取消に進むことを意図的に避けたのだと考えられる。
沖縄県による「埋立承認取消」に対して、国は、
裁判所は異例のスピードで審理を進め、2016年12月に
「埋立承認取消は違法」
とする判断を示した。
翁長知事は、わざわざ
「最高裁判断には従う」
との発言まで示していた。
「埋立承認取消」が裁判所に否定され、沖縄県も「
ていたから、
ている国民が多い。
翁長氏の「最高裁判断に従う」などの発言は、
せられたものであるとも考えられる。
しかし、事実はまったく違う。
「辺野古に基地を造らせない」
ために必要不可欠で、もっとも有効な手法は、
「埋立承認の取消」
ではなく
「埋立承認の撤回」
である。
最高裁が「埋立承認の取消」を違法と判断したなら、
ちに
「埋立承認の撤回」
に進む。
これが正当で当然の対応である。
しかし、翁長氏の行動は違った。
最高裁が「埋立承認取消を違法」と判断して、
は、
「埋立承認取消の取消」
であった。
最高裁判断は、沖縄県による「埋立承認取消の取消」
持たない。
「あらゆる手法を駆使して辺野古に基地を造らせない」
という言葉が真実であるなら、
自ら進んで「埋立承認取消を取り消す」
ことなど、あり得ない。
翁長知事のこの行動により、
日米首脳会談に間に合うように、
である。
この本体工事着手実現に誰よりも貢献したのが、
本来取られるべき行動は、
「埋立承認取消を取り消さず」に、
「埋立承認撤回に進む」ことである。
「埋立承認取消」が違法であるのかどうかの判定基準は、
があったのかどうかだが、
「埋立承認撤回」が違法であるかどうかの判定基準は、
あるのかどうかである。
翁長知事自身が、2014年の知事選で沖縄の主権者が「
せない」との判断を示したことが、「埋立承認撤回」
を繰り返し明言してきているのである。
行政権力の番人である裁判所でも、
ある。
しかし、翁長知事は迅速に「埋立承認撤回」に進まず、
実質的に容認、サポートしている。
「辺野古に基地を造らせない」ことを求めるすべての沖縄県民は、
翁長氏に対して、その真意を質(ただ)すべきである。
最近になって、ようやく、
り始めている。
私は、
ジウム
緊急提言「埋め立て承認撤回なくして 辺野古は守れない!」
で基調講演を行った。
https://www.youtube.com/watch?
講演で私は、
1.今回シンポへの参加の経緯説明
2.辺野古米軍基地建設問題の背景および日米安保問題との関連
3.9月10日菅義偉官房長官会見の意味
4.辺野古米軍基地建設問題を巡る訴訟等の現状
1)埋立承認取消および執行停止訴訟
2)ジュゴン「自然の権利」訴訟
3)米国議会調査局報告
5.埋立申請承認の「撤回」と「取消」の法的意味
6.選挙公約と政治行動に関する考察
7.9月13日翁長雄志氏知事選出馬表明記者会見の論点
について話した。
講演での私の主張は以下の3点に要約できる。
1.辺野古米軍基地建設を阻止するためには、
一人に絞り、
結束して支援する必要があること
2.辺野古米軍基地建設を阻止するためには、
から判断しても、仲井真知事が行なった埋立申請承認を「撤回」
消」することが必要不可欠であること。
3.
める県民の統一候補者とされているが、
は取消」を公約に掲げておらず、
である。
上記の9月13日の翁長雄志氏知事選出馬表明記者会見でのやり取
問題を考える上で、極めて重要で貴重な資料になっている。
翁長氏は知事選出馬に際して、頑(かたく)なに、
「埋立承認の撤回、取り消しの公約化」
を拒絶した。
記者会見での発言をぜひ、自分の目で確認していただきたい。
「今大議論となっている翁長市長、県知事選出馬記者会見2」
https://www.youtube.com/watch?
4分45秒~6分45秒の場面だ。
2014年10月7日の基調講演でも、
出馬記者会見でのやり取りのなかで、重要と思われる、
考察した。
読売新聞:すいません、読売新聞のカイヤと申します。
す。
あの、少ししつこいようなんですが、
いんですが、あの辺野古移設に関して、ま、具体的な方法論は、
うようなことでしたけど、ま、現にいまあのー、
反対を唱えながら、政府は一貫して移設計画を進めています。
で、知事選の結果にもかかわらず、
いますが、そういうなかで、反対はしたけれど、
しまった、という結論になったときに、どう、こう、有権者に、
ないという部分を、こう、まあ担保してゆくのかというか、
体的なものをきちっと明記されていくというお考えでしょうか。
翁長:私はね、まあ、
が、普通の人がそういう質問をするとね、
日本政府とアメリカ政府を相手にね、
10万人集会も何回もやったんですよ。
このこう要請行動に、県41市町村長、41市町村議長、
ですよと言って一顧だにしないですよ。
こういう政府を相手にね、私たちにね、
た責任に負えないんじゃないんですか、などというのはね、
いう考え方を持っているんならば、もしあれば、
じゃないでしょうかという話をね、すると日本政府もね、
んじゃないかという話があれば少しはいいんですが、それをね、
い中をね、僕らはね、穴を開けてね、そしてそれをね、
しようとして、やっている。
と方法論は、いまこれだけの人間がね、
ずね、相談をして、いい形でね、やっていける。これが・・・。
記者会見で読売新聞記者が翁長氏に質問した、その質問内容は、
あり、まさに、沖縄の主権者が疑問に思い、
衝くものであった。
記者会見では、
問内容の要旨も明快で、どこにも、「失礼」
これに対して、翁長氏は、言わば「逆ぎれ」して、
言を示したのである。
そもそも、
本化に向けての調整に際して、
「埋立承認を撤回し、政府に事業中止を求める」
ことを条件に掲げていた。
ところが、この表現が、
「新しい知事は承認撤回を求める県民の声を尊重し、
い」
に変化した。
つまり、
「埋立申請承認撤回の公約への明記」
が排除された。
公約が曖昧化されたのである。
その理由は、翁長氏の支持陣営に埋立承認の撤回・
することにあると考えられる。
この勢力は、辺野古米軍基地建設を実体としては容認し、
事の巨大な行政権限、
思われる。
こうした勢力が存在し、他方で、本当に「
求める県民が多数存在する。
その両者の支持を得なければ知事選当選を果たせない。
そのために、
「腹八分、腹六分」
で、「曖昧な」
その当然の帰結として、
見かけ上は、「辺野古に基地を造らせない」
らされながら、
実体上は辺野古米軍基地建設が着実に進行する
という現実が示現されているのである。
私が提示し続けてきたこの見解と重なる見解は、
後退した時点から存在していたことを見落とせない。
ある全国紙は次のように伝えていた。
「翁長氏を支持する沖縄県政野党5団体は、
埋め立て承認を撤回」と明記する方針だった。7月、
事は埋め立て承認撤回を求める県民の声を尊重し、
ん」となり、撤回の実効性は事実上ゼロに後退した。」
翁長氏出馬会見で読売記者は、「埋立承認撤回」
古に米軍基地を絶対に造らせないとしている翁長氏の方針について
保する、
る。
失礼でも何でもない。
この質問を上から威圧する発言で封じ込めようとするのは、
者でもない。
私が講演を行ったシンポジウム開催に対しても、
る動きが数多く散見された。
しかしながら、現時点までの経緯、そして、
しているという現実を見る限り、知事選時点における私の懸念は、
のものになっている。
翁長雄志知事の下での辺野古米軍基地建設着実進展の現実を直ちに
見直さない限り、沖縄県民は、
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